ホンダ取締役代表執行役副社長が辞任。業務時間外での懇親の場での不適切行為により告訴される。役員選任で考慮すべき要素とは。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

ホンダの取締役代表執行役副社長は2025年4月7日、辞任しました。

業務時間外の懇親の場での不適切行為により被害者が警察に告訴したことがきっかけのようです。

昨年の ENEOS HD と同様に懇親の場での不適切行為が原因です。

ENEOSやホンダのような著名な企業において経営トップによる宴席の場での不適切行為が相次いだ様子を見ると、企業は、経営トップによる宴席の場での不適切行為をリスクの一つとして認識すべきことが、より一層当然になったと言ってよいでしょう。

ホンダ役員相互のガバナンス

ホンダによると、

速やかに監査委員会主導による調査及び処分案の取りまとめを行い、取締役会へ報告するとともに、外部専門家へ意見を求めました。それらを受け、取締役会において処分を決する予定であった

とのことです。

副社長でさえも不適切行為を行ったことが明らかになれば、他の役員から監査され、処分される予定であったことは、ホンダ役員相互のガバナンスが機能していることを印象づけます。

直近では、昨年10月にオリンパスが、社長に対する薬物購入の告発を受けて、社内調査の上、取締役会にて辞任を求めたところ、社長が辞任したケースも、同様に役員相互のガバナンスが機能した例と言えましょう。

役員を選任する際に考慮すべき要素

ENEOS HD やホンダに限らず、すべての企業は、経営トップによる宴席の場での不適切行為をリスクの一つとして認識すべき時代になりました

このリスクへの対処の仕方としては、

  • 飲酒すると不適切行為を起こしてしまいそうな人材を役員候補に選任しない
  • 役員就任後も飲酒時に不適切行為をしないよう繰り返し注意喚起する
  • 役員が業務の延長にて飲酒する際には必ず誰かを同席させる
  • 役員が飲酒時に不適切行為をしたときには、どんな優秀な役員であっても処分する方針を固める

などが考えられます。

1点目は、役員候補者を選ぶ際の人材評価要素に酒癖を入れるということです。

ENEOS HD が再発防止策として、取締役の選任プロセスの強化を発表した例が参考になります。

2点目、3点目は今日からでも実行できます。

特に2点目は、ホンダの副社長の辞任が報じられたこのタイミングにすぐにでも行ってほしいです。

鉄は熱いうちに打てと言うように、役員がホンダの報道を見て問題意識があるうちに、各自の意識に刷り込むということです。

その一方で、3点目は、同席しても会長や社長にモノが言えない人を同席させても意味がありません。

役員に対して歯に衣着せない物言いができる人を同席させたいです。

4点目は、取締役会でそのような方針を決議することです。

取締役だけでなく監査役、執行役員を含めて、厳しく対処するし、対処されるとの共通認識を持ち、自覚を持つためのステップです。

方針を定めたのに、その後、他の役員に甘い処分をしなければ、取締役としての監視義務違反の責任も問われます。

その意味で、取締役会で方針を決議するだけでという簡単な手続きですが、非常に効果的であるように思います。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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