シャトレーゼが下請法違反となる受領拒否等により、公正取引委員会から勧告。下請代金相当額約2383万円の支払いと、保管費用相当額の支払いへ。下請事業者からの納品に際して留意すべき点。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

やっと3月の各種書面起案、複数の原稿の締切、3月総会、事業年度内の社内研修などによる多忙期間を脱し、春を感じられる余裕が出てきました。

さて、今回は、シャトレーゼが2025年3月27日、下請法違反となる受領拒否等によって、公正取引委員会から、下請代金相当額約2,383万円と保管費用相当額を支払うよう勧告を受けた件を取り上げます。

シャトレーゼによる下請法違反の概要

シャトレーゼが公正取引委員会によって下請法違反と判断されたのは、以下の行為です。

  • シャトレーゼは、下請事業者に対し、洋菓子の包装資材・原料(本件商品)の製造を委託した。その際、本件商品を納入できる状態にする期日を仕上日として定め、仕上日以降、必要に応じて納入を指示することにより、下請事業者から給付を受領している。
  • シャトレーゼは、仕上日を経過しているにもかかわらず、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者11名からその一部を受領していない。〔受領拒否〕
    • 2024年12月30日時点で、下請事業者11名から受領していない本件商品の下請代金相当額は2382万9854円
  • シャトレーゼは、遅くとも2023年12月1日以降、仕上日を経過しているにもかかわらず、下請事業者に対し、上記受領していない本件商品を自己(シャトレーゼ)のために無償で保管等させていた。〔不当な経済上の利益の提供要請〕

概要図は公正取引委員会の公表資料から引用します。

公正取引委員会は、上記受領拒否によって下請事業者11名に支払っていない下請代金相当額約2383万円を支払うことと、受領拒否の間、下請事業者11名に無償で保管させていた保管費用相当額を支払うことを勧告しました。

下請事業者に帰責性がないのに上記の受領拒否を認めてしまうと、下請事業者は商品を受領されるまで下請代金を支払ってもらえなくなってしまい、かつ、無用な保管費用をシャトレーゼのために負担し続けなければならないからです。

保管費用は以前にも取り上げた金型の保管費用と考え方は同じです。

下請事業者からの受領拒否の考え方の整理

下請事業者の帰責性と受領拒否

下請法が禁止しているのは、下請事業者の帰責性がないのに、親事業者が受領拒否することです。

例えば、親事業者があらかじめ定めた検査基準を恣意的に厳しく運用して、発注内容と異なること又は契約不適合があることを理由に商品の受領を拒否する場合は、違法な受領拒否です。

他方で、洋菓子の包装材として品質が適合しないものを下請事業者が製造して納品しようとした場合や委託した商品と包装材や原料と違うものを納品仕様とした場合には、親事業者は受領拒否できます。

受領拒否できる場合

上記のように、下請事業者が納入しようとした商品に契約不適合がある場合や注文した商品と異なる商品が納入された場合のほか、

  • 下請事業者が納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等、下請事業者に帰責性がある場合
    • 例えば、親事業者が期間限定で発売を企画していた商品について、下請事業者が発売期間前までに納品しなかった
  • 商品の購入に当たって下請事業者との合意により受領しない場合の条件を定め、その条件に従って受領しない場合
    • 例えば、検査基準を事前に定めて、出荷検査・受入検査の時点で、基準に達していない場合
  • あらかじめ下請事業者の同意を得て、かつ、商品の受領を拒むことによって下請事業者に通常生ずべき損失を負担する場合
    • 例えば、親事業者が受領拒否した場合には、下請事業者に発生する物流費用・保管費用を親事業者が負担することをあらかじめ合意していた場合

は、親事業者は受領を拒否することができます。

シャトレーゼは、下請事業者が本件商品を納入できる状態にする期日を仕上日として定め、仕上日以降、必要に応じて納入を指示することにより、下請事業者から給付を受領していました。

これだけでは、下請事業者に仕上げ日までに完成させたにもかかわらず、シャトレーゼが受領を先延ばしして、受領するまでの保管費用を下請事業者に負担させているだけです。

これを適法な取引にするなら、

  • シャトレーゼが必要に応じて商品の製造を個別発注し、個別発注ごとに仕上げ日・納入日を定める
  • 仕上日を決めたのであれば、シャトレーゼが納入を指示するまでの保管費用をシャトレーゼが全額負担することを事前に下請事業者と合意する

などの取引方法に改めることが必要です。

優越的地位の濫用との関係

そもそも受領拒否を禁止している下請法は、優越的地位の濫用を禁止している独禁法の特別法(親事業者と下請事業者の一定の取引にだけ特別に適用される法律)です。

独禁法の優越的地位の濫用としても受領拒否は禁止されています。

独禁法の優越的地位の濫用ガイドラインでは、「商品を納期に受け取らないこと」以外に「納期を一方的に延期すること又は発注を一方的に取り消すことにより納期に商品の全部又は一部を受け取らない場合」も受領拒否に含むとされています。

そのため、下請法の受領拒否にも、納期の一方的な延期、発注の一方的な取消しによる受領拒絶も含まれると考えた方がよいでしょう。

シャトレーゼの件は、下請事業者が仕上日までに完成させても、納入を指示するまでは保管させ続けていたのですから、納期の一方的な延期と捉えることもできます。

契約書においても、あるいは下請事業者から完成品を納入してもらう現場においても、どのような行為をすると下請法違反の受領拒否、あるいは独禁法の優越的地位の濫用に当たるかは理解しておいた方がよいでしょう。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。

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