こんにちは。弁護士の浅見隆行です。
光文社は2025年3月11日、雑誌「CLASSY.」2025年4月号に掲載した「オペ看護師が主人公! スカートしばりの着回しDIARY」と題した企画の中で不適切な表現があったことを謝罪しました。

「オペ看護師が主人公! スカートしばりの着回しDIARY」と題した企画の中で、看護師を主人公に「医師と結婚したすぎて院内の外科医とドロドロ院内不倫をするオペ看の着回しコーデ」と題した着回しテクニックを紹介したことに対し、「医療関係者を馬鹿にしている」などの批判の声があがったのです。
品性・品位の欠落が原因
問題は、なぜこうした企画が社内での企画会議を通って掲載されることになってしまったのか、その原因です。
端的に言えば、「雑誌が売れればよい」「話題になりさえすればよい」という売上至上主義・認知至上主義が前面に出過ぎて、雑誌編集部としての品性・品位が欠落していることが、その原因であるように思います。
CLASSY.は毎月のようにSNSで話題になる着回し企画を掲載しています。
しかし、2023年10月号で企画した「日本沈没まであと1カ月…防災女子の9月着回しDiary」に対しては面白いとの声がある一方で否定的な意見も目立ちました。
ところが、CLASSY.は否定的な意見には目もくれず、むしろ、「日本沈没」着回しDiaryが話題に!担当編集に制作秘話&裏話を聞いてみたら…【服見えてないけどいいの?実は伏線がある?】」などと制作秘話を語る記事まで発信しました。
「日本沈没」などという企画を肯定的に捉え、むしろ胸を張って誇っていることがわかります。
こうした編集部の姿勢からは、以前から、「雑誌が売れれればよい」「話題になりさえすればよい」という売上至上主義・認知至上主義に重きを置き、品位・品性に対する配慮が欠落していたことが伺えます。
今回の不倫企画も、その意識の延長で行われたのでしょう。
品位・品性は、コンプライアンスや企業の社会的責任以前の問題
品位・品性は「自律」
CLASSY.の企画に対し、コンプライアンス意識の欠如や企業の社会的責任を指摘する声も見られます。
しかし、コンプライアンスで問われているのは法令遵守だけではなく「世の中の人たちなどの期待に応えること」ですし、企業の社会的責任も「企業が世の中の一存在としてのどうあるべきか」を認識することが問われています。
どちらかというと、世の中との関係性を問う概念です。
それに対し、品位や品性は自分たちがどれだけ気高くいられるか、要は「自律」の問題です。
ガバナンスの角度から言い換えれば、企業理念や企業の行動指針など「わが社はどうあるべきか」「わが社はどう行動すべきか」というフィロソフィー(哲学)の問題です。
その意味では、編集部が「自律」できていなかった、と言えましょう。
「自律」ができないなら、社内での「他律」が及ぶように「ガバナンス」体制を機能させるしかありません。
光文社の企業理念
光文社の企業理念は「明日のあなたへ、ときめきを」です。
そこに込められた思いは、光文社のサイトに丁寧に書かれていますが、CLASSY.の企画との関係では、以下の部分が関係するように思います。
時代の変化に伴って、雑誌、週刊誌、書籍だけでなく
イベントやECなど生み出すものは多岐にわたっていますが、
光文社はそれらの「物語」を通じて、あなたが変わるきっかけや
心の充足につながる熱量、高揚感を生み出したいと思っています。
それが「ときめき」です。
「看護師を主人公に「医師と結婚したすぎて院内の外科医とドロドロ院内不倫をするオペ看の着回しコーデ」企画が、読者の「ときめき」に繋がるかと言えば、どうでしょう。
今一度、売上至上主義や認知至上主義を見直し、企業理念を今後の企画に生かすような編集をするように「自律」して改めてもらいたいと思います。
もちろん、その前提として、会社として社内全体に再度企業理念を浸透させる教育も必要不可欠です。
