2024年4月から労働契約締結時・有期労働契約更新時の法規制が変わる。契約書・労働条件通知書のひな型の変更などは今のうちに準備を。

こんにちは。弁護士の浅見隆行です。

3月決算の会社は、下期が始まる10月のタイミングで人事異動を行う会社が多いと思います。

しかし、2024年4月以降、人事異動を簡単にはできなくなるおそれがあります。

就業場所、従事すべき業務の変更の範囲の明示義務

2023年3月30日に厚労省が労働基準法施行規則を改正したことにより、2024年4月1日以後に新たに締結する無期労働契約と有期労働契約のいずれにおいても、契約締結時/更新時に、

  • 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)

を労働条件として明示することが義務づけられました(施行規則5条1項1号の3)。

「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」は今までも明示義務がありました。今回追加されたのは「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。」の部分です。

人事異動によって勤務場所が変更することや業務の内容が変更することがあるなら、2024年4月1日以後は、契約締結時/更新時に、無期労働契約、あるいは有期労働契約を明らかにしておかなければならないのです。

有期労働契約の更新上限の有無と内容の明示義務

更新上限の有無・内容の明示義務

2023年3月30日の労働基準法施行規則によって、有期労働契約の締結時/更新時に、

  • 有期労働契約の更新の上限の有無
  • 有期労働契約の更新の上限の内容

を労働条件として明示することが義務づけられました(施行規則5条1項1号の2)。

有期労働契約は、原則は上限が3年(高度の専門的知識等を必要とする職種が上限5年)で、更新により通算契約期間が5年を超えるときには無期労働契約に転換できる権利が生じます(無期転換ルール)。

詳しくは以前に書きました。

会社は、この無期転換ルールに基づく権利を行使されないために、有期労働契約にあらかじめ更新の上限を5年とすることを労働契約に定めることが少なからず実態としてありました。

他方で、有期労働契約者の中には5年の経過によって無期転換ルールによって無期労働契約に転換できると期待している者もいます。

そこで、有期労働契約者に余計な期待を抱かせないために、有期労働契約の契約締結時/更新時に、更新の上限の有無、上限がある場合の内容を明らかにすることを会社に義務づけました。

そのため、2024年4月1日以後は、有期労働契約の契約締結時/更新時に、「この有期労働契約は更新できる/更新できない/更新できても上限が5年」などと契約書に明示しておかなければなりません。

更新上限の新設、短縮の事前説明義務

また、有期労働契約の契約締結時には更新の上限を明示しなかったものの2024年4月1日以降の更新時には更新の上限を新たに定める場合、あるいは当初明示していた更新の上限を2024年4月1日に短縮する場合には、会社は、その理由をあらかじめ労働者に説明することも義務づけられました(厚労省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」1条)。

無期転換申込み権発生の明示義務

有期労働契約を更新し通算契約期間が5年を超えるときには、有期労働契約者には無期転換を申し込む権利が発生します。

そのため、2024年4月1日以降に有期労働契約を更新したことにより、契約期間中に通算契約期間が5年経過し、有期労働契約者に無期転換を申し込む権利が発生するときには、会社は、有期労働契約の更新時に

  • 無期転換の申込みに関する事項
  • 無期転換後の労働条件

を明示することが義務づけられました(施行規則5条5項)。

無期転換後の労働条件について、会社は、就業の実態に応じて、正社員等とのバランスを考慮し、有期契約労働者に説明するよう努めなければならない義務を負っています(厚労省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」5条)。

同一労働同一賃金の原則があてはめるということです。

厚労省からの情報発信

詳細は、厚労省の通達に記載されています。

2024年4月1日以後、労働基準法違反とならないように、今から契約書・労働条件通知書のひな型などの変更を行い準備してください(おそらく厚労省からひな型の改訂版が公表されるはずです)。

また、今回の説明内容を簡略化したリーフレットを厚労省が出していますので、そちらも参考になるはずです。

アサミ経営法律事務所 代表弁護士。 1975年東京生まれ。早稲田実業、早稲田大学卒業後、2000年弁護士登録。 企業危機管理、危機管理広報、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティを中心に企業法務に取り組む。 著書に「危機管理広報の基本と実践」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」。 現在、月刊広報会議に「リスク広報最前線」、日経ヒューマンキャピタルオンラインに「第三者調査報告書から読み解くコンプライアンス この会社はどこで誤ったのか」、日経ビジネスに「この会社はどこで誤ったのか」を連載中。
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