こんにちは。
弁護士の浅見隆行です。
新潟県は、4月21日、サーバに保存していた公文書データ約10万件が消失したことを発表しました。システム保守業者の人為的なミスが原因とされています。
新潟県のリリースに発生した経緯が詳細に説明されていました。
そこで、今回はこの経緯を分析して、そこから他の企業が業務を執行する際に関して学べるポイントを説明しようと思います。
なぜ公文書が消失してしまったのか?
消失原因はシステムへの新しい機能の追加
今回、公文書が消失した原因については、新潟県が使用している公文書管理システムに、システム保守業者が新しい機能を追加したことが一因であると説明されています。
しかし、これは表面的な原因にすぎません。
新潟県が発表した内容を読み進めると、保守業者では、業務を執行するためのガバナンス(内部統制)が機能していなかったことに本当の原因があるように見えます。
本当の原因はガバナンスが機能していなかった
新潟県のリリースで説明された事故発生経緯
新潟県のリリースを読んでいくと、今回の事故が発生した経緯について次のように説明されていました。
この説明が気になったのは、次の3点です。
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必要な社内手続き(運用テスト、社内審査、バージョン管理等)を行わずに適用させた
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開発担当者と運用担当者の間で適用させたことの共有がされていなかった(運用担当者は新たな機能が適用されたことを把握していなかった)
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県から不具合の連絡があったが、運用担当者は・・添付ファイルが削除されるはずはないと思い込み、対応が遅れた
このケースに限って言えば、いずれも作業プロセスの問題であるように見えます。しかし、より広い視野で見れば、業務執行に関わるガバナンスが機能していなかったと言い換えることができるように思います。
なぜガバナンスの問題と言えるのか
なぜ、業務執行に関わるガバナンスと言い換えることになるのでしょうか?
業務執行に関わるガバナンスで必要なのは、ガバナンスの整備と機能です。機能しなかったときの危機管理体制も必要です。
具体的には、
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ミスが発生することを予防するために必要な手続やルールを定めること(ガバナンスの整備)
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その手続やルールどおりに業務を執行すること(ガバナンスの機能)
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必要な情報は社内で報告・共有すること(ガバナンスの機能)
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事故が発生した後の一報が入った後には迅速に事実を確認調査するなど対応すること(危機管理)
などが、どこの会社でも行っている内容かと思います。
これを今回の事故にあてはめると
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新しい機能を追加する際の必要な社内手続き(運用テスト、社内審査、バージョン管理等)は定められていたので、ガバナンスの整備はできていました。
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しかし、開発担当者は、その社内手続を行わずに、新しい機能を適用してしまいました。これはガバナンスが機能していなかったということです。
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さらに、新しい機能を追加したことが開発担当者と運用担当者とで共有されていなかった。必要な情報の報告、共有もできていなかったことになります。
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そのうえ、県から不具合の連絡があっても、運用担当者は思い込みで動かなかった。危機管理体制も機能していなかったのです。
結局、ガバナンス体制は整備されていたけれど、それが機能していなかったという結論になります。
まとめ
こうした事故が発生したときに、他の企業は「新潟県と保守業者、大変だね」という感想を抱くでしょう。
しかし、それで終わってはいけません。
どこの会社でも人為的なミスは起きるものです。私も時々ミスします。
それでも、ミスを減らすことはできるはずです。
そのためには、こうした事故が発生したときに、一度、社内のガバナンス体制を見直すことがオススメです。
今回であれば、
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「手続やルールを定めてあったか?」
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「手続やルールを守れているか?」
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「情報の報告、共有は徹底されているか?」
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「危機管理体制は万全か?」
などです。
面倒かもしれませんが、ぜひ一度試してみて下さい。